働き方・働く場の研究と視点

KNOWLEDGE

レイアウトデータからみるオフィスの現在〈前編〉

2021.11.10
  • Creativity
  • Research
  • SpaceDesign
  • Workplace

 

オカムラでは、オフィスづくりの指標となる優良オフィス
(日経ニューオフィス賞*の応募資格に該当する企業)を対象とし、
レイアウトに関する基礎データを継続的に収集しています。
今回はその中から「1人当たりのオフィス面積はどのくらい?」など、
オフィスづくりのベンチマークを設定するうえで参考となるデータをご紹介します。
*日経ニューオフィス賞
日本経済新聞社と一般社団法人ニューオフィス推進協会(NOPA)が主催する賞で、創意と工夫を凝らした、今後の範として認められているオフィスを表彰するもの。


オカムラの調査では、オフィス全体を分類するにあたって、壁で囲われたエリア単位の空間(①)でオフィスを分けています。さらにそのうち執務エリアについては、設置されている家具の種類・用途やレイアウトに応じて、スペース単位の空間(②)で分類しています。この分類は、FM推進連絡協議会編(2018)『公式ガイドファシリティマネジメント』を参考に作成しています。

*本文中に記載されている各年の値は、その年のデータを含めた最新4年間の図面を計測し算出した平均値を使用しています。例えば、2020年の数値は、2017年~2020年に収集した169物件の平均値を表していることになります。また、「1人当たり面積」を算出するための在籍者数は、デスクワークを行うために使用していると思われる執務エリア内のイスの数を基に算出しており、ミーティングスペースにあるイスなど、共用で使うイスの数は席数に含んでいません。


POINT 01
1人当たり面積の推移

オフィスの空間構成を検討する際に大切なのは、自社の現状を把握することです。まずは面積を在席者数で割った「1人当たり面積」を見てみましょう。

図2の変遷をみると、1人当たり面積は減少傾向にありましたが、ここ数年は執務エリアの1人当たり面積は増加傾向にあることがわかります。要因としては、ABW*に対応したオフィスの件数増加が考えられます。そのようなオフィスでは、レイアウトが複雑になりやすく、結果的に1人当たり面積が大きくなるためです。
*ABW(Activity Based Working)
仕事の内容や目的に合わせて、オフィスの内外を問わず働く場所を選択する働き方。


POINT 02
「業種」「立地」「所有形態」による違い

また、オフィスの1人当たり面積は、入居企業の業種、オフィスビルの立地や所有形態などの条件によって大きく異なることがわかっています。

例えば、賃貸ビルと自社ビルの1人当たり面積を比較すると、執務エリア自体の差はほとんどありませんが、オフィス全体の差は5㎡/人ほどもあります(図3)。
新たにオフィスを計画する際には、必ず「業種」「立地」「所有形態」などの条件を考慮したうえで、適切なベンチマークを選定するようにしましょう。


POINT 03
ABWに対応したオフィスの普及

今回の調査対象の中に、どの程度ABWに対応したオフィスがあるかを調べると、約2割が該当することがわかりました。経年での変化をみると、働き方改革に注目が集まった2017年以降、普及の勢いが増しています(図4)。

この動きは、コロナ禍を経てリモートワークとオフィスワークの併用が普通になると、さらに加速することが予測され、これまで一般的だった机・イスが整然と並んでいるオフィスから大きく様変わりするかもしれません。ABWには、主観的パフォーマンスの向上や健康リスクの低減、ワーク・エンゲイジメントの向上など様々なメリット*があり、企業の生産性が向上することが期待されます。
*ABWの効果に関する記事はこちら
*出典:WORK MILL RESEARCH ISSUE01/オカムラ/2019年
後編では、「デスクと収納量のスタンダード」や「打ち合わせ場所の設置数の目安」などをご紹介しています。

Research: 牧島満、秋永凌(オカムラ)
Edit: 大野菜々子、吉田彩乃
Illustration & Infographic: 浜名信次、藤井花(Beach)
Production: Plus81 inc.