働き方・働く場の研究と視点

KNOWLEDGE

変わるオフィスの空間構成と座席のとらえ方

2022.1.20
  • Creativity
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  • SpaceDesign
  • Workplace

 

新型コロナウイルスの感染拡大は、働き方に大きな変化を与えています。
ここでは、働き方の変化にともなって予想されるオフィスの空間構成の変化と座席のとらえ方について、
新しいアイデアを紹介します。
POINT:
・今後、オフィスで大きく変化することが予想されるエリアは「執務エリア」「会議エリア」「共創エリア」の3つ
・「座席」を「ワークポイント」という考え方でとらえ直すことで、オフィスで実現したい働き方のタイプとレイアウトの整合性を確認することができる


働き方の変化と
オフィスの変化

コロナ禍の前までは、オフィスに出社して働くという、働く場所が固定された働き方が当たり前だったのではないでしょうか。

ところが、コロナ禍によって、在宅勤務を余儀なくされ、その結果、働く場の自由度が高まりました(図1)。
今後、オフィスのあり方を検討する際に、オフィスとそれ以外の場所がそれぞれどう使い分けられるのか、あえてオフィスに行く目的となる機能は何なのかを考えていく必要があります。
オフィスに必要となる機能や規模を検討する際に、今後はオフィスの入居人数に加えて、出社率も考慮する必要があります。企業が目指す働き方の方針に合わせて、今あるオフィスや、今後設けるオフィスのスペースをできるだけ活用できるような工夫についても考えることが重要になるでしょう。
働き方の変化について、オカムラでは1980年にオフィス研究所を設立し、働き方や働く場に関する知見を長年蓄積し続けてきました。
この章ではそれらを活かし、オフィスの空間構成がどのように変化するのかという予測と、その変化に合わせた、新しい座席のとらえ方についてご紹介します。


オフィスの面積構成は
どのように変化する?

オフィスの機能の中で最も大きな変化だと考えられるのは、個人作業ではなく協働作業のための受け皿としての役割が大きくなることです。
企業が成長し、新しい価値を生み出すためには、「共創」と呼ばれる協働作業が必要になるとオカムラは考えています。「共創」とは、既存の組織の枠組みを超えた協働作業のことで、社内であれば部や課を超えたプロジェクト、社外であれば企業の枠を超えたコラボレーションを指します。
実際に空間としては、ワークショップやブレインストーミングなどが行えるスペースが必要になります。時間をかけて課題を検討するために、長時間滞在していても快適に過ごせるデザインが求められます。また、カフェのような一息入れるための機能が併設されることが望まれます。

そこで「共創」のような新しい機能を含め、今後オフィスの面積構成がどのように変わるかを推測してみました(図2上)。
今後、大きな変化をすることが予想されるエリアをピックアップすると、「執務」「会議」「共創」の3つのエリアが挙げられます。それぞれエリアの特徴は図2下の通りです。


席数の新しいとらえ方
「ワークポイント」

今後、リモートワークと出社のハイブリッドワークが普及し、オフィスに出社する頻度が減ったとき、これまでのように一人ひとりに座席を用意していては、空席だらけの非効率なオフィスになる可能性があります。
そのようなことを防ぐために座席を特定の個人のものとするのではなく、フリーアドレスを導入し座席の数を見直すことが必要になるでしょう。
また、席の機能を一つに限定しないことも有効です。例えば、今までのミーティング席は、打合せをするためだけの場所であり、打合せがない時間は空席となっていました。これからは、使用者がいない時は、適宜個人作業でも使える席として流動的に運用することが大切です。

席の運用方法を見直すために、オカムラでは「座席」を「ワークポイント」という考え方でとらえ直すことを提案しています。ワークポイントとは、ワーカーが一定時間、快適に作業ができる席のことで、図3のように多様な席が考えられます。ワークポイントの考え方は、昨今普及が進んでいるワーカーが席を使い分けながら働くABWを採用する際に、特に有効になります。
図3で示したようにワークポイントにはいくつかのバリエーションがありますが、これらをどのように組み合わせてオフィスに配置するかは、経営者やオフィス計画者がオフィスで実現したい働き方と照らし合わせて決定する必要があります。
オカムラでは、オフィスで実現したい働き方のタイプとワークポイントの配分の整合性を確認できるよう、ワークポイントを「集中」「交流」「共創」の3つに分類しています。

図4上のレイアウトを例に見ると「集中」と「交流」は、執務エリアの中にあるワークポイントで、「集中」はソロワーク前提の席、「交流」はチームワーク前提の席となります。「共創」は、共創エリア内にあるワークポイントが該当します。
図4下のレーダーチャートは、オカムラのオフィスレイアウトのデータベースの平均値を偏差値50として、「集中」「交流」「共創」の3つのワークポイントの配分比率をプロットしたものです。チャートの三角形の形状を見ることで、どんな特徴を有したオフィスなのかを判別することができます。


「ワークポイント」から見るオフィスの分類

上の図は、3つの種類別にワークポイントをプロットしたレイアウトとワークポイントの配分を基に算出したレーダーチャートです。レーダーチャートの形状により対象となるオフィスを、オペレーション型、チームビルド型、イノベーション型のいずれかに分類することができます。またバランス型のように、複数の型を併せ持つ場合もあります。
オフィスのレイアウトが、目指すオフィスの方針に合致しているのかを判断するのは簡単ではありません。レイアウトの特性をレーダーチャートに表すことで、それらが合致しているかを判断することができます。
このように、ワークポイントを分析することで、オフィスの「特徴」を判別することができます。一度、ご自身のオフィスを確認してみてはいかがでしょうか。


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この記事の掲載誌「KNOWLEDGE - WORK DESIGN REVIEW 2021」はこちらからダウンロードいただけます。(P58-65をご覧ください)

Research: 牧島満、森田舞(オカムラ)
Edit: 大野菜々子
Illustration & Infographic: 浜名信次、藤井花(Beach)
Production: Plus81 inc.