働き方・働く場の研究と視点

KNOWLEDGE

つながりを促すために

2022.2. 4
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2020年より続くコロナ禍で、
一緒に仕事をするメンバーと離れて働きながらも、
そのつながりの大切さを改めて認識した人も多いのではないでしょうか。
一緒に仕事をするメンバー同士のつながりを促すための工夫は
企業によって様々ですが、どんな施策が有効に活用されているのか、
また、それによりどのような効果がもたらされているかを調べてみました。
POINT:
・つながりを促すための施策をうまく活用することで、つながっている人数が増え職場に対する満足度が高まっていく
・導入しようとする施策が組織文化やワーカーの特徴にあっているかどうかを見極めることが大切


人や情報との接点を
持てているのか?

オフィスで一緒に仕事をするメンバーと十分なつながりを構築できておらず、日常的な情報共有があまりスムーズにできていないという声を耳にします。

実際に、「多様な人や情報との接点を持てていると思うか?」「多様な人や情報を効果的に活用できていると思うか?」とオフィスワーカー600名にアンケート調査で聞いてみたところ、「そう思う」と答えた人は全体の3~4割に留まっていました(図1)。
今般のコロナ禍で一緒に仕事をするメンバーと直接会う機会が減っている中、もっと交流をはかりたいと感じている人も多くいるはずです。
オフィスでのつながりを増やし、より円滑な情報共有を進めるにはどうすればいいのでしょうか。


つながりを促す施策

一緒に仕事をするメンバーとつながり、コミュニケーションをとることの大切さは感覚的に理解できると思います。社内でつながっている人数が一定数以上いる人は、メンバーと情報を共有しやすい傾向にあることが既往の研究*でも分かっています。
オカムラは、リフレッシュスペースなど、オフィス内にメンバー同士のつながりを促す空間をつくってきました。さらに、自己紹介の機会を設けたり、部活動などの活動を通じてメンバー同士のつながりを促してきました。
それでは、メンバーの人となりや、取り組んでいる仕事の状況などを知るための施策は、実際にどのくらい活用されているのでしょうか。ここからは、図2のようなメンバーとのつながりを促す施策に関する調査結果をご紹介します。
*出典:WORK MILL RESEARCH ISSUE02/オカムラ/2020年


つながりを促す施策の
導入率はどのくらいか?

多様な人との接点を増やすことを期待して設けたリフレッシュスペースが利用されず、あくまで個人の休憩スペースとして利用されている光景をよく目にします。

そこで、メンバー同士のつながりを促すために用意された空間をどのくらい活用しているか、オフィスワーカー600名を対象にアンケート調査を行いました。その結果、昼食時の会話への参加者は多く見られましたが、それ以外の施策はあまり活用されていないことがわかりました。つながりを促す施策の活用は、思いのほか進んでいないようです。
単に施策を導入するだけではつながりの促進は難しく、それがオフィスで人と人とのつながりが十分に広がらない大きな理由のひとつと考えられます。
では、どのような工夫が必要なのか施策を活用していると回答した人の特徴を見ていきましょう。


組織・ワーカー個人の特徴と
施策活用度

図4は、つながりを促す施策をどのくらい活用しているのかを7段階で評価してもらい、組織やワーカー個人の特徴別にカテゴリーを設定し、各カテゴリーの平均得点を示したものです。
まず、職場に対する満足度*別にみていくと、満足度の高い職場は、満足度の低い職場よりもすべての施策を活用できています。信頼できるメンバーに囲まれ安心して働くことができる環境では、多くの施策が有効に機能するようです。
また、職場に対する満足度が低い職場でも、成果主義、年功序列という分類でみていくと、成果主義の傾向が強い組織では「自己紹介(朝礼・終礼)」「自治会・ 勉強会」は活用度が高くなっていることがわかりました。これは、成果に追われる忙しい日々の業務の中でも、交流する明確な理由がある施策だと参加しやすいからだと考えられます。年功序列の傾向が強い組織では、「部門専用スペース」「カフェスペース」が特に活用されています。世代間のギャップを埋める必要性から、偶発的な交流を行うスペースが求められているのかもしれません。
次に、座席の運用別に見ると、フリ-アドレスの人は、固定席の人よりも施策を活用しています。毎日違う人と隣り合って仕事をする状況が、互いを知ろうとする意識になり、施策の活用につながったと考えられます。
勤続年数別にみると、勤続年数が5年以下の人は、6~9年の人よりも、活用度が低い空間が多くなっています。勤続年数が短い人は、空間を活用することに慣れていないのかもしれません。活動については空間ほど勤続年数で活用度に違いはありませんでした。
また、勤続年数が10年以上の人たちは空間・活動どちらの施策も活用度が低くなっています。メンバーとのつながりがある程度でき、施策の必要性を感じなくなっているのかもしれません。勤続年数が短い人には、まずは活動から参加をしてもらうことで、つながりができ、自然に空間を使えるようになるでしょう。
向性別にみると、内向的な人は、外向的な人よりも施策活用度が低く、自ら会話に参加し、情報を得ようとする積極性が低い傾向があると考えられます。「部門専用スペース」「自己紹介(朝礼・終礼)」「部活動」といった気軽に参加できる施策を行うことが望まれます。
*職場に対する満足度
この研究では、『自身の成長や働きがい』『発言/ 行動の自由度』の満足度より設定します。


つながっている人数と
職場に対する満足度の関係

職場に対する満足度が高いと、施策の活用度が高いことがわかりましたが、そのような職場にはどのような特徴があるのでしょうか。

図5は、つながっている人数が増えるに従って、職場に対する満足度が高まっていくことを示す調査結果です。
この傾向は、オフィスの規模の大小にかかわらず同様であることがわかりました。つながっている人数が増えるということは、相手のことを理解する機会に恵まれやすく信頼関係が築かれていくことで、安心して仕事に打ち込むことのできる職場環境がもたらされるということでしょう。
図4で紹介したように、満足度が高い職場になるほどつながりを促すために用意された多くの施策をうまく活用できるようになり、今回の誌面では紹介できませんでしたが、つながりを促す施策が機能するとつながる人数が増えることも明らかになっています。結果としてさらにつながりの輪を拡げられることが予想されます(図6)。


つながりの拡大が
もたらすもの


「つながり促進」のまとめ

多様な人と接点を持つことは、情報を得る機会を増やすことにつながり、そこで得た情報を活用できるようになれば、仕事を効率的に行いやすくなります。つまりメンバーとのつながりを拡げることで、オフィスの生産性そのものが向上する可能性があると言えます。
メンバーとつながるための施策を多くの人が活用することで、つながっている人数が増え、人数が増えると安心して仕事のできる職場になると考えられます。職場に対する満足度が高まるとさらに施策の活用が進むという好循環があらわれそうです。
この循環を生むためには、つながりを促す施策をうまく活用できていないグループに対し新たな施策を講ずる必要があります。導入しようとする施策が組織文化やワーカーの特徴にあっているかどうかを見極め、活用を促すマネジメントを行うことが大切です。


この記事の掲載誌「KNOWLEDGE - WORK DESIGN REVIEW 2021」はこちらからダウンロードいただけます。(P24-31をご覧ください)

Research: 鯨井康志(オカムラ)
Edit: 大野菜々子
Illustration & Infographic: 浜名信次、藤井花(Beach)
Illustration (Top Banner): 米村知倫
Production: Plus81 inc.